(毎月発行の『連絡紙』より)


●平成14年11月号
 隣に一人ヤクザの組長が住んでいてどうにもならない。昔この家が悪いことをしたからヤクザになった。だがヤクザの窮状を見かねて仲良くしようとなった。仲良くするための話し合いの時にヤクザの悪さが色々出て来た。ヤクザは「オレじゃない。子供が勝手にやっていたことだ」と言い訳をした。
 …北朝鮮のことだ。日本の総理は拉致された人の安否を事前に知っていた。事務官の事前折衝の最大問題だったからだ。だが知ったのは出発直前で、それも思っていたよりズッと悪い事だった。北朝鮮の望むものが経済援助で、その為に過去の悪事を公表した。そんな北朝鮮が手ぐすね引いて日本の総理を待っている。それが分かっているが行くと言った以上(米国の圧力もあって)行くしかない…それが総理の出発の堅い表情だった。
 それほどまでして北朝鮮と国交を回復して北朝鮮を国際社会へ引き込まねばならなかったのか。…政治の話は苦手だからよく分からないが、方法論は別として国交回復と国際社会への仲間入りと言う目標は正解だったと思う。どんな不出来なヤクザでも孤立させておけないのが現実だからだ。
 筋論をいえば、一国の代表者の知らないところで起きた国家のかかわる犯罪だったという言い訳は通用しない。それほどの力しかない者なら国交回復の交渉相手にする必然がない。なにより拉致の責任を当事者に押し付けて処分したという事を認めてはならない。国家が行った犯罪は戦争であるなしにかかわらずその国家自身が公表し責任を負うべきだ。だが北朝鮮は国内に向けて拉致の犯罪に関しては何も言わなかった…。北朝鮮だけではなく国家とはそういう非情なものなのである。
 国家の維持の前には、拉致されて死亡を確認された家族の気持ちなど屁とも思わない。疑えばきりがないが、拉致された人々のうち今も諜報活動をしている人が死んだことにされているのかもしれない。大韓航空の襲撃事件(あの時はソビエトに撃墜されることを韓国も日本もアメリカも無線を傍受していて分かっていた。だが大韓航空にそれを連絡すればソビエトの軍事無線を傍受していることが明白になる。だから乗客の命より傍受がバレないことを優先した)や第二次大戦で英国がV2ロケット弾でやったこと(ドイツの暗号無線を解読している事を悟られないために、チャーチル首相はV2ロケット弾の空襲を英国国民に知らせなかった)がそうだったように、大切なのは国家が命ある事なのである。
 しかし国家が国を維持するための痛みと我々が朝鮮の人々に加えた差別と痛みを何とも感じなくなっている(それをよい事とは思わないが)のとは全く同じ次元だ。
 今回の筆者の言いたいテーマは国家の非情さにある。お上と呼んで神様扱いするが、国や団体は個人を救うものでない。国や団体は国や団体を救うのが最優先で全てなのだ。個人を教えるのは個人しかいない。国や団体は個人を統率し邪魔なら排除して行くものなのだ。言うことを聞いていれば助けてもらえると思っているのは大いなる錯覚だ。国の失策は必ず最後に国民を泣かせる。良し悪しの問題でなく、そうせねば維持できないものなのだ。
 はっきりと自覚せねばならないのは、自分を守ってくれないのは何も国だけでないということだ。夫婦や社会でもそうなのだ。だから対立があってこそ夫婦や会社なのだと悟らねばならず自分を救うのは自分しかないと自覚せねばならない。どんなに仲がよくていつも助けてくれる夫婦や会社は便利だが、あるべき姿は見いだせない。
 対立があってこそ、自分を救えるのが自分しかない事が分かる。その為には、できなくとも自立への姿勢を持ち続けることが最低限に必要なことなのだ。

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